エルバルトという森と湖に囲まれた国にドッティと言う美しい娘がお母様と一緒に住んでいました。
ドッティのお父様は、この国を守る将軍でしたが、敵国デストラに進軍したまま行方が分からなくなっていて今では、15の誕生日にもらった綺麗なペンダントだけがドッティにとっての父の思い出なのでした。
ある晴れた朝、ドッティが湖で花を摘んでいると、馬に乗った若者が通り掛かりました。
その綺麗な身なりの若者はドッティの前で馬から降りると、
「こんにちは、ちょっと前を失礼します」
と言ってから手綱を引いて、乗っていた栗毛の馬に湖の水を飲ませ始めました。
それを見ていたドッティは、若者が王家の紋章の入った短剣を腰に付けているのに気がつきました。
「王子様ですね」ドッティが声をかけると、王子はうなずき、「あなたは?」とこちらを見ました。
「私はダルワンの娘でドッティと申します」
「おう、勇者ダルワンの姫君でありましたか」
二人が見つめ合っていると、
「王子様。どこにおられます?」
「王子様」
と呼ぶ声が近づいて来ました。
「やれ、城を抜け出したのがもう分かってしまったか」
王子はいたずらそうに舌をペロッと出して。
「また時間のある時に来ます」
と言って馬に跨がり、お城へ帰って行きました。